歯周病は細菌感染症だということは一般的になってきましたが…

歯周病、あの歯がぐらぐらになって口臭が強くなり最後には歯が抜けてしまうあの病気、実はその正体は歯周病菌、ということは多くの方が知るようになってきました。

そう、歯周病は歯周病菌による細菌感染症で、人にもうつる病気なのです。

だから口腔ケアを頑張ってやりましょうね…という文句はよく歯科医院に行くと歯科衛生士さんに言われるフレーズなのではないでしょうか。

ヒトの歯周病に大きく関与する細菌は歯科の世界ではレッドコンプレックスという代表的な3種類の細菌として知られています。

  1. プロフィロモナス・ジンジバリスPg菌
  2. タンネレーラフォーサイシアTf菌
  3. そしてトレポネーマ・デンティコーラTd菌

です。

その中でもPg菌は特に歯周病の悪化要因の一つとして問題視されている悪い細菌の一つです。

Pg菌がアルツハイマー型認知症に関わっている可能性があると九州大学が発表

以前から、このPg菌は動脈硬化にも関連していて、悪臭を放つとんでもない細菌として知られていました。

今回このPg菌によって、実はアルツハイマー型認知症の脳内老人斑成分も産生されていることが九州大学の研究で最近発表されたわけです。

ヒトの歯周病の歯茎および歯周病原因菌であるジンジバリス菌(Pg菌)を全身に慢性投与したマウスの肝臓に、脳内老人斑成分であるアミロイドβ(Aβ)が産生されていることを初めて発見しました。
臨床研究により重度歯周病の罹患と認知機能低下が正相関することが報告され、Pg菌成分がアルツハイマー型認知症患者の脳内に検出されたことから、歯周病によるアルツハイマー型認知症への関与が注目を集めています。

世界初ヒト歯周病の歯茎で脳内老人斑成分が産生されていることが判明
〜歯周病によるアルツハイマー型認知症への関与解明の新展開〜
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/396

研究のテーマと内容は上のページに記載されている。なので、ここでは特に解説はしません。

しかし、アルツハイマー型認知症は現在いまだ有効な予防法が確立されていない、いわば未知の領域の多い病気です。

また、発症してから5年以内には要介護となる病気です。

それだけに、その病気と関連性のある病気が歯周病であった、という研究結果が発表されたことは、歯科医にとってもただ事ではありません。

口腔ケアは全身に影響する

口腔ケアをおろそかにされていると歯周病で将来歯を失うだけでなく、アルツハイマー型認知症を発症してしまい、大切な記憶までも失って、その5年後には介護状態となってしまうかもしれませんよ...

とお伝えできれば、毎日の口腔ケアに関しても、もっと真剣に取り組んでいただける方が増えていくかもと願っています。

さらなる研究を期待したいところです。

アルツハイマー型にかかわらず認知症にも歯は関係します

これは直接的な関係ではないのですが、認知症のリスクを下げることができる明白なエビデンスとして次の3つがあるとされています。

  1.  適度な運動をする
  2.  趣味や知的好奇心を持つ
  3.  コミュニケーション、社会参加をする

これは、私が以前参加した学会での東北大学加齢医学研究所 機能画像医学研究分野教授 瀧康之氏の研究から得られた知見によるものです。

この研究内容は、5-80歳の3000人の健常者の脳MRI,認知力、生活習慣、遺伝子等のデータを収集し、横断的縦断的な脳画像データベースを作成し、これらのデータを用いて、脳MRI,画像から見る健常な脳発達、加齢を明らかにし、さらにどのような生活習慣などの要因が脳発達、加齢に影響を与えるかを明らかにしてきました。

その研究結果からのエビデンスです。

歳をとってからも歯を失うことなく基本的に楽しく食べることができれば、歯を気にすることなく積極的に人と食事をする機会も自然と増え、外に出て人と会話をする機会も自然と増やすことにつながり、結果的に認知症予防となります。

そもそも歯を失わせないための対策を早いうちから積極的に知っていただき、義歯にならない状況を作ることが結果的に一次予防につながるということになります。

ぜひ、押さえて頂ければと思います。