歯周病がざまざまな病気と関連しているという報告はさまざまな機関からこれまでにもたくさんだされてきました。

過去に出されたエビデンスの中で、すでに定説となっている、肺炎(誤嚥性肺炎)の原因として口腔内の清掃状態が大きく影響していることや、糖尿病のヘモグロビンA1Cの数値に影響しているといったことなどが報告されてきました。

内科的な疾患との関連では、さらに京都大学が2016年12月に出された次の事実はまだあまりご存じない方もいると思いますのでここにご紹介しましょう。

歯周病の予防が動脈硬化を防ぐ可能性

動脈硬化が原因となって発症する病気で亡くなる人は非常に多く、また助かっても脳梗塞や心筋梗塞などの後遺症によるリハビリや介護など、医療費の増大が大きな社会問題となっています。近年、歯周病をはじめとした口の中の炎症が動脈硬化と関係していることが報告されており、口の中の病気の予防が動脈硬化に関わる死亡のリスクを下げる方法の一つとなる可能性があります。しかし、本当に関連しているかどうか、また日本人の場合はどうかなど、まだ明らかにされていないことが多いのが現状です。

(中略)

その結果、失った歯の数と動脈硬化度に有意な関連があることが分かりました。また、女性に比べると男性でその傾向が強いことも明らかになりました。歯周病など口の中の病気は、予防効果が非常に高いことで知られており、歯科医院での定期的なメンテナンスや歯の清掃指導などで失う歯の数を減らすことができます。口の中の病気の予防や治療は、口の中の状態を改善させるだけでなく、動脈硬化症を予防するためにもよい影響がある可能性が考えられます。

これによると、歯周病の予防が動脈硬化を防ぐ可能性があるというものです。

3年間かけて1万人を対象としたコホート研究の結果で、かなり大規模なものです。なので、その信用度はかなり高いと言えます。

動脈硬化の要因としてはこれまでに分かっていることでは、喫煙や肥満、高血圧、糖尿病などなどのさまざまなものが絡んでいるために、歯周病がさらにその要因であるかどうかということを判断することは、かなり大掛かりな研究をしなくてはできないものでした。

そういった意味で、今回のような大規模な人数を対象とした研究が成果として現れるまでには、相当な労力を要したと思われます。ですのでこの研究はかなり評価に値すると言えます。

今回の京都大学の報告によって、さらに死亡原因の一つと大きく関連している動脈硬化も一つ仲間入りしたということになります。

皆さん自身の自覚を持った毎日の口腔ケアと、定期的な歯科医院でのメンテナンスがますます重要とされてきたようですね。