みなさんは、歯周病がなくならない理由をご存知ですか?

歯周疾患は細菌感染症であるために、人にもうつす病気です。しかも他の感染症のようにかかったとしても、静かに静かに本人が気づかぬまま、病態が進行していくという実はとても質の悪い病気なのです。

ではそんな恐ろしい物がなぜなかなか無くならないのか。それは、見た目にも分かりづらいかつ、きちんとしたメンテナンスケアを行わないといけない、強敵だからです。

歯周病細菌とは?何をするの?

歯と歯茎の境い目にたまったぬるぬるしたバイオフィルムの中には歯周病細菌がたくさんいます。その細菌の出す毒素の影響で歯周組織の破壊がゆっくりとすすみ、ここから体全体の免疫系統の戦いが水面下で始まります。

そして時がたち、本人が歯茎の違和感に気づいて症状がではじめたころにはすでに歯周組織がかなり破壊されはじめ、白血球の死骸とともに口が臭くなり血が出たり、むずがゆくなったりといった独特の違和感とともに、歯周病のステージが悪いほうへ一歩進んでしまったあとだったということなります。

歯周病の症状は初めのうちは一進一退で持続しないために、たいていは何の対策も取られないまま、歯周病のステージはさらに悪いほうへゆっくりと進みます。

再び症状が出れば、その時だけ気がついて一時的に汚れを取ろうと少しは治療に専念します。ところが違和感が消失するとそれでもうすっかり治ったと思い、安心して以前のように何もしない状態へ舞い戻ります。

一度なった人こそ、より一層注意してメンテナンスしないといけない

目先すぎると人は現実の忙しさの中で丁寧に歯ブラシすることなど忘れてしまうものです。そして口腔ケア予防のための通院もすぐおろそかになってしまうのが一般の方の現実のようです。その結果、取り残された口の中のバイオフィルムはさらにここぞとばかりに黙々と作業を再開し始めます。

本当は一度でも歯周病の既往のある方は、すでに歯周組織に歯周ポケットというハンディができてしまった以上、その事実を絶えず気にすべきなのです。歯周病のステージをこれ以上すすめないように維持していくためには、これまで以上の日頃のケアやメンテナンスの努力も要求されます。しかもバイオフィルム阻止のための口腔ケアメンテナンスの間隔もそれまで以上に詰めて通院する必要が出てくるのです。

知は力、とはよく言ったものです。そのことを知り、実践することで将来のあなたは大きな武器を手に入れ、本当に計り知れない利益をもたらしてくれることになるのです。

予防のためにはセルフケアとプロフェッショナルケアの2つが必要

歯周病はかからないように予防することが唯一確実な対策となります。そのためにはセルフケアとプロフェッショナルケアの2つが必要不可欠です。

毎日のあなた自身の歯ブラシではあなたの口の中の取るべきバイオフィルムの6割しかとれておらず、残りをそのまま繰り越して放置してしまっています。

定期的なプロフェッショナル口腔ケアクリーニングを受けることで、トレーニングされた専門家の手で隅々まで取り残されたバイオフィルムを定期的に取り除けます。

そこの場所が悪さをする前に、あらかじめ定期的に完全に機械的に除去されることができたかどうか、それこそがその後の大きな分かれ道とります。

バイオフィルムについてはこちらもご覧下さい。

バイオフィルムについて

バイオフィルムが堆積しないようにするためのメンテナンスがおすすめ

しかしながら、どなたも完璧な歯ブラシができているわけではないために、必ずバイオフィルムの取り残しは口腔内のどこかの部分に慢性的にできてしまっています。

その状態を放置することにより細菌数が多くなり歯周病が発症してしまうのであれば、そもそも堆積してしまうもっと前の段階で何とかしてやりたいと思いませんか?

自分の毎日のブラシで取り残した部分も含めて、人の手で定期的に完璧にバイオフィルムをはがしてやる作業と、そこにバイオフィルムが付きにくくする妨害物質で表面をコーティングしてつるつるにしてやる作業を施して、マトリックスの形成を遅らせることが出来るわけです。

クリーニング・ホワイトニング

歯周病の進行は気づきづらい

歯周病はたいてい歯茎が腫れるとか血が出る、などの症状が出てしまった結果、本人が気づいて治療で来院される場合がほとんどです。このような違和感が出てしまっている場合、程度の差こそあれ、すでに歯を支えている歯槽骨の吸収は始まってしまっていることがとても多いのです。

しかも通常それは口の中の全ての部分の歯で進行しているわけではない。なので、あなたにとっても病状に気付きにくく、大したことではないと思ってしまうのです。

こうしている今も、口腔内ではあなたの知らないうちに細菌たちの旺盛で地道な働きで時間とともに静かに着々とバイオフィルムは堆積し始めているのです。

髪が伸びたから美容院へ行く、ように目で見えるところには意識は自然と行くものではありますが、目では見えないお口の奥の方では難しいですね。

皆さんの意識の改革がとにかく必要で、それを実行に移された方からでない限り絶対に歯周病をなくすことはできません。

歳とともに免疫力が下がっていき危険度も上がります

また、歳とともに免疫力が下がっていきますので細菌の攻撃への抵抗力も年々低下し始めるために、メンテナンスクリーニングの重要性は歳とともに増していくことになります。

歯周病の研究で先進国であるスウェーデンでは治療目的ではなく、こうしたプロフェッショナルケアを行うために何でもなくても定期的に歯科診療所へ行くことが国民の間では当然とされています。

そのため80歳での残存歯数は25本以上と驚異的でほとんど歯を失っておらず、日本の17本(2017年度厚生労働省調査)とは雲泥の差となっているのをご存知でしょうか。

余分な治療の費用や時間が減らせる。なので、トータルではお得です

プロフェッショナルケアにより歯周病にかからなければ、余分な治療のための時間や費用もかからなくなります

結果的にいつまでも健康で何でも食べられ、笑顔が自然と増え、大脳への適度な刺激もでき、認知機能の低下も減らせて健康寿命をより持続させやすい環境を手に入れることが出来るのです。

近くで話す人との息がさわやかになり、安心してコミュニケーションがとれ生涯自分の歯で過ごせ、健康寿命に多大な貢献をもたらします。口臭は人から指摘がされにくいだけに、他人へのエチケットとしても大切です。

以下の様なことも起こりうるということをぜひ覚えて頂ければと思います

歯周病を気にしないことのリスク

1. 歯を失ったあとの後悔と経済的な多大な損失とQoLの大きな損失

抜歯された後人工歯根インプラントを入れようとすると自費で1か所当たり45万円くらいの出費となります。また健康保険では義歯なら入れられますが、とても違和感が強く、慣れるのに時間がかかります。結果的に外されっぱなしになることが多く、残っている歯をさらに痛めることとなります。

2.将来の健康状態への多大なリスク

口腔ケアをおろそかにしていたことにより、口腔内のバイオフィルムが多くなり、プラークや細菌の数が増えていきます。それが口だけに限らない別の病気をも悪くしてしまう、ということが周辺医学でわかってきました。

歯周病と関連している病気の報告は多数エビデンスとして報告されてきました。一番多いのは誤嚥性肺炎で、口の汚れがお年寄りの肺炎の80%の原因となるというものですが、

これ以外に、心臓疾患、糖尿病、認知症、などとの関連性も指摘されはじめ、多くの研究者からの報告がだされるようになってきました。

3. 歯周疾患は一度かかると進行を止め続けるには一生余分な労力と努力が必要

歯周病の病状は、ステージ3とよばれる歯槽骨の吸収が始まってしまった段階から先の方は、絶対に完治できません。

一見症状が治まったとしても、それは本当の意味で治っていないのです。症状を自覚していないだけなのです。です。なので、手を抜くと必ず再発しますし、1ヵ月ごとの定期的な口腔ケアを一生続ける必要もあります。

先にお話しした北欧、とりわけ口腔ケア先進国のスウェーデンのように定期的な歯科健診と定期的なメンテナンスクリーニングを受けるのが当然といった成熟した国民的な土壌ができていれば問題ないことなのですが。

病気になってから治しに行く疾病保険が国民皆保険である日本とは残念ながら制度そのものが違います。

予防歯科医療に対しての認識が健康保険がきかないという点で、日本ではまだまだ後進国なのかもしれません。人生100年時代のこれからは、予防に対しての意識も我々は真剣に変えていく必要があるのかもしれませんし、そうされた方から、本当の健康を長期間享受できるのではないでしょうか。

4.人へうつす危険があるという事実はご存じでしたか?

歯周病は細菌感染症です。エイズや結核と同様、人にうつしてしまう疾患であるということはご存知でしたか?

夫婦間、家族間で歯周病の方が多いのは私ども医療機関でよく経験することの一つですが、それ以外でも、親しいカップル、親子間、お孫さんとの間などでも十分感染します。

です。なので、よく口腔ケアができていない方との箸の共有や食べ物の共有は避けるべきでしょう。

歯周病という病は一度なると後戻りができないという点から、そうなってしまう前の健康であるあなたにぜひ知っておいていただきたいという思いです。