増えてきている「歯のしみ(知覚過敏)」

最近の新患で特に多いのが“歯が全体的にしみてしょうがないので何とかしてほしい”といった訴えのかたです。

虫歯の場合には表面的に黒く穴が開いていたりして虫歯と一目でわかるのですが、一見なんでもない歯がそのようにしみてしょうがないので何とかしてほしいと来られます。

病名としては業界用語で知覚過敏とよんでいますが、この問題は実は非常に大きな問題点をかかえています。

歯ブラシの当てすぎ…ではないことも多いのです

原因は歯ブラシの強いあてすぎです…と昔は言われてきましたがどうやらそれだけではないことが最近の研究で明らかになってきました。

やはり噛み合わせが問題なことがある

歯は本来、点と点でかみ合う咬合面が接触してかみ合っていますが、磨り減ってくると面同士の接触になり歯1本1本への負担は相当なものになっていきます。

それに加えて、奥歯などでは横からの異常な咬合力が加わることで、歯の付け根あたりにマイクロクラックとよばれる微小欠損が生じてそこから歯牙のすりへりの原因がはじまるということです。

顎がダイナミックに動く際、糸切り歯とよばれる犬歯は横からの力をしっかりと受け止められるようにすべての歯牙の中で一番根の長さが長くできている歯なのですが、この歯がしっかりとガイドしてくれる場所に並んでいなかったり、磨り減りすぎてきた場合に奥歯への知覚過敏がさらに進行していくことも考えられます。

市販の歯磨き粉やコートはあくまで「対処」

つまり、テレビのCMのように表面的に対症療法的にしみる部分に薬やイオンのバリヤーを作っても根本的には原因に対処したことにはなっていないわけです。

ではどうしたら知覚過敏がなおせるのでしょうか?

噛みあわせを注意深く審査して磨り減っているガイドとなる糸切り歯まで を含めた前歯の状態の改善や面接触になってしまっている臼歯部の咬合面のあらたな負担のかからない形態再生と言うことになります。

場合によっては簡単なつけたしですんでしまうこともありますし、場合によっては全体的に手直しをしなくてはならない場合までさまざまです。

歯がしみるのは実は歯の噛み合わせが原因だった…なかなかこれはご自身では気付けないことだと思います。

沁みるというときに、即決で虫歯とするのではなくきちんと診断する歯科医院で見て頂ければ幸いです。

現代人のストレスが原因なことも?

当院は開業して25年以上たちますが、知覚過敏症の方が多いのにはとても驚かされます。

知覚過敏症が最近増えてきた理由は所説ありますが、発表されている研究の一つをご紹介します。ストレスマネジメントの場として、口腔器官が使われている結果であるというものです。

現代人は社会生活をするにあたって、脳の中で無意識に情報処理を余儀なくされることが多くなっており、昔の時代の人間よりも明らかにその量は大きく膨れ上がってきています。

日中の鬱積したストレスが、夜間寝ている間に解放された結果、口腔器官を使った歯ぎしり(ブラキシズム)となって発現して、それが歯の根元付近に応力としてたまっていき、歯の結晶体が少しずつ侵襲を受けて剥がれ落ちた結果しみる現象が起こり始めることにもつながります。

もしそうであるなら、噛み合わせのバランスを取っておきたい

歯がそうした人間のストレスマネジメントに使われているのだとすれば、強大な歯ぎしりにさらされたときに対応できるような前歯と奥歯のバランスの取れたかみ合わせを作っておく必要があるでしょう。

矯正は時間と費用が掛かるので無理だという方や全体的にかぶせ物で修復する方法は大変という方には、夜間の食いしばりや歯ぎしりの力を少しでも分散できるようにスプリント(マウスガード)という取り外しのきくプラスチック性の装置(健康保険適応)という選択肢もあります。

いくらなおしてもしみるのが取れない方や、根本的なところから治したい方は、一度ご自分の噛み合わせの状態をしっかりと調べてもらう顎機能精密検査などをお受けになるのもいかもしれません。