こちらの動画にまとめていますぜひご覧下さい

今日は、みなさんに身近な虫歯に関するお話です。

但し虫歯治療のお話というより、知って得する、最新の虫歯診断の方法と早期診断による削られずに済む予防治療法についての情報提供です。

虫歯と言うと穴の開いた虫歯を想像される方が多いと思いますが、ある日突然歯に穴があいて虫歯ができるわけではありません。

 痛くない、穴は開いていないけど・・・と思うレベルの虫歯予備軍を必ず経てから、穴があいた虫歯へと徐々に進んでいきます。

絶対にさけたいとどなたも思うのは、痛みがでたあと、しぶしぶ歯医者さんに行って、あのキーンといった音で削られる虫歯治療でしょう。

 それなら、そもそも穴の開くもっと前の段階で、確実に虫歯予備軍とその兆候を確実に知る方法があれば、削られずに治せる・・・というのが今回のお話なんです。

虫歯は目に見えてるところばかりにできるとは限りませんよね。しかも最初のうちは症状もなく、その気にならないと誰も気づけません。

 症状がない、見た目穴はあいていない、見えにくい歯と歯の間にある

こんな初期の虫歯の兆候を、いち早く確実に知ることができる方法がもしあるならその方法を知りたいと思いませんか?

そこで今回は

1.虫歯のできる過程と、そのステージごとの治療方法の違い

2.従来の歯科検診と虫歯診断の限界について

3.知って得する最新の虫歯診断の方法とその実際の手順 

についてお話しさせていただきます。

 

1.虫歯のできる過程とそのステージごとの治療方法の違い

虫歯のごくごく初期の状態ってどんな状態だと思いますか?

実はこの時点で見つけられるのが一番いいのです。でもこれが一番難しいのです。

ちなみに、虫歯になりやすい場所Top3は、

  • 歯と歯の間(コンタクト)
  • 歯と歯頚部のきわ
  • 歯の噛む面の溝

の3箇所です。

また、特に白いプラークの汚れの中に埋もれていたりすると、さらに見つけにくいことが多いのですさて、虫歯は、ある日突然歯に穴が開いて出来始める・・・ことはありません。

最初、歯の表面が脱灰と言って、表面のエナメル質が白濁してくる現象から始まります。

 歯の表面の清掃状態が悪かったり、デスクワークでだらだら食いや清涼飲料水をゆっくりとちびちび飲んだり、のど飴などをいつも口に含んでいたり、あるいは逆流性食道炎などで酸性の胃酸がこみあげてくる環境が続くと、口の中が酸性状態となっている時間が長くなります。

やがて、歯の表面にバイオフィルムやプラークと呼ばれるねばねばしたものが付きやすくなってきます。

その停滞時間が長いと歯の表面が溶けてくる現象が始まります。これが脱灰という現象なんです。

ただ、健康な人の口の中には唾液があるので、通常ですとその唾液の浄化作用のおかげで、食べ物を食べた後でも、時間とともに口腔内の酸性状態を自動的に歯の溶けにくいPHにまで自動的にもどしてくれるんですね。

普通の人がすぐに虫歯にならないのはそのためです。

この浄化作用のサイクルが崩れて、慢性に清掃状態が悪く、口腔内の酸性状態が続くなどの条件が加わると、問題が起き始め虫歯が大きくなり始めます。

歯の成分は、ハイドロキシアパタイトと呼ばれる結晶からできています。その結晶はカルシウムやリンといったミネラルで構成されていて本来はとても固い結晶なんです。初期段階では、歯のエナメル質表面は透明感が無くなり、白濁して、あたかも黒板に書くときに使う白いチョークのようになってきます。

 

その写真にお見せしている例は実際の歯と歯茎の境目にできた初期の虫歯予備軍の例です。

歯茎に沿って白い帯状のものが確認されると思いますが、その部分を指します。歯と歯茎の境目にはそもそも軟らかい細菌の塊となっているプラークという白い汚れの塊がつきやすい場所なのですが、この写真はプラークではなくプラークをこそげとって汚れを取った後の状態です。

プラークは軟らかい汚れなので、基本的に歯ブラシで取れますが、この脱灰した白濁は歯ブラシでどんなにこすっても取れません。

この状態のことを学校検診などでは、CO(Cオブザベーション)とよび、要観察歯という位置づけで判定されます。

なんだ、まだ虫歯ではないんだ・・・よかった、と安心するのは大間違いで、ほっておくとやがて穴の開いた虫歯に移行してしまう可能性の高い危険な状態の歯・・・という意味なんです。

さっきのCOと判定された歯、拡大してみると白濁している部分の向こう側が、すでに少し茶色くなってきているところがあるのがわかると思います。こっちの状態は既に次の虫歯のステージエナメル質う蝕C1というレベルに突入している状態なのです。

ですので「あなたの歯はCOです」と言われた場合は、たいてい隣の歯や他の部分も虫歯予備軍となっている可能性が高く、特に注意が必要です。

実は、COとそれ以上の虫歯とでは治療方法が天と地ほどの差があります。COは削らずに済み、C1以上は削って治す、が基本だからです。

このことをわかりやすくまとめられた研究論文で過去にチャールズぺニングというオランダの歯科大学の研究者が出版した書籍があるので、これをもとに引用させていただきます。

ぺニング博士は2021年残念ながら亡くなられましたが、この本の中で紹介されている虫歯になっている歯の断層標本写真があります。

この写真向かって左側Bの部分は既にカリエスが象牙質にまで進行して実質欠損ができてしまって黒くなっているC2状態、向かって右側矢印Aの部分が、これがCOの状態です。

 

Aではまだ実質欠損にはなっておらず表面が白濁しているだけです。

臨床の現場ではBの状態では削られて治すことになります。

Aの状態の様に、COの歯がありますね・・・と言われた時、あなたに課せられた対策は次の2つです。そうすれば歯を削る治療はしなくて済むのが大きな特徴です。

一つ目の対策は生活習慣と口腔内環境の改善です。

歯が脱灰してしまった原因となる生活習慣の改善をして、だらだらグイ、だらだら飲みをしない、

飴や清涼飲料水などを長時間ゆっくりと停滞させながら飲んだりなめたりしない。夜間胃酸がこみあげてくるような逆流性食道炎が疑われるならお医者さんで診察を受けて薬をもらうなどの対策をする。

2つ目の対策は歯の表面の積極的なミネラル補充による修復です。

脱灰してしまった歯の表面へのミネラル補給をして、積極的に歯の表面の修復ができるというものです。

このミネラル補給の方法は、すでに商品化されているMIペーストというものを使って、歯の表面に塗って使います。

 

いわば、お肌ならぬ歯の表面のパックとでもいうものです。

MIペーストは牛乳の成分から作られているミネラルが豊富な歯に塗るクリームです。

メルボルン大学のレイノルズ教授によって開発され、製品化されたもので、成分は牛乳由来のリカルデントという複合体でそもそも薬ではないので毎日つかっても全く安全です。

日本ではMIペーストという名称でGCから販売されています。

但し牛乳由来ですので牛乳アレルギーの人にはお使いいただけません。

使い方は簡単で、

脱灰した歯の表面を、まずフッ素入りの歯磨きで歯磨きした後、MIペーストを塗って、すぐに吐き出さずにそのまま30分くらい放置しておくだけというものです。

30分の間に歯の表面の修復が進むわけです。

また、ハイドロキシアパタイトの成分の入っている歯磨き粉も脱灰した歯の表面の修復には有効だと言われています。

毎日実行して一定期間後に再度COの部分が大きくなっていないかチェックする必要があります。

 

 

虫歯になってしまった後の治療方法

さて、もう少し虫歯が進んでしまうと、その時点ですでにある程度分かるくらいに穴が開いてきたり黒くなってきたりしますので誰でも気づきます。

虫歯は小さければ、そこを削って詰めるだけの小さな治療ですみます。ほっておいて大きくなれば、削って詰めるだけでは間に合わなくなり、削って型取りをしたあと大きなかぶせ物をして治すことになります。やり方や詰め物の材質は健康保険で使うものと自費治療で使うものではいろいろとあります。詳細について知りたいという方は、かぶせ物の種類というところでご案内していますのでそちらをご覧ください。

具体的な隠れ虫歯の例をご紹介しましょう。

上から見ただけでは穴は開いていないので、見た目では虫歯かどうかがわかりませんが、レントゲンで虫歯ができているのがわかったので上から削り進んでみると確かに黒くなってしまっている虫歯が見えてきたのでお分かりいただけるでしょう。

別の例をお見せします。これも見た目虫歯で穴が開いていないのですが、実際に横のところから虫歯になって穴が開いていたのがお分かりいただけるでしょう。

いずれにせよ、大きくなるほど結果的にお金がかかります

また歯が削られる部分も大きくなるので、痛みも時間も伴うという点で、どなたも避けたいと思うでしょう。

2.従来の検診と虫歯診断の限界

一般的に臨床の検診現場では,基本的には見た目からの歯科医師の経験的な視診のみで診断されていることが圧倒的に多いのが現状です。

学校検診などの集団検診などもそうですよね。

視診のみですので基本的に黒く穴の開いていそうな場所のみの判断でしかないので、目だけでは見えない歯と歯の間などは全く見落とされていることが多いのも事実だと思います。

仮にレントゲンが撮れたとしても、一般的にレントゲン写真で虫歯として診断できるくらい大きな変化がみられるのはエナメル質から象牙質まですすんでしまったC2くらいからなんです。

象牙質まで進めば、レントゲンである程度の虫歯の影がうつる大きさになり確認されるので、その時点ではじめて正確な虫歯と診断されます。でもこの時点で見つかったとしても、結局は削られる治療の大きさの虫歯なわけです。

一方、初期う蝕と言われる先ほどのCOの多くは、エナメル質にあるうえ、レントゲンからの識別はほとんど困難ですが、この時点で見つかれば削られずに済むのです。

 

視診とレントゲンだけでの検診では

レントゲンにも映らない程度の初期の隣接面のエナメル質の虫歯がもしあったとしても、歯科医師の目でもわからないので、見落とされていることは圧倒的に多かったと言えます。

また妊婦さんなどは、検診に来られた際に、そもそもX線が胎児に影響があるので、レントゲン撮影は当然できません。また、お子さんに対しては、治療でないのにレントゲンで被ばくさせるのはそもそも避けてほしいという親御さんもいらっしゃいます。つまり予防検診で毎回頻繁にレントゲンを撮って調べるなどはできないのが現状でした。

 ごく初期の虫歯病変COであれば、すでに最初で説明したようにそもそも歯を削られる事はありません。

ブラッシング指導とフッ化物塗布やMIペーストでのミネラルパックを行い生活習慣の改善に基づいて実行していただくだけですみます。

あなたの歯は何も削られる事無く対応できるので、ごくごく初期でのCOの段階でのスクリーニングができさえすれば、削られる治療とはならないので誰もがハッピーです。なぜなら痛みも全くなく一番安くて簡単に済からです。

要するにたまに行う歯科検診でCOをいかに早期に確実に発見することができるのかが今までの歯科検診での一番の課題点でした。

 

3.新しい虫歯の診断方法

 ここで朗報なのは、最近になって、従来のレントゲンの被ばくリスクもなく、見た目からだけの判断にたよらず、精度も高い新たなう蝕診断の方法の可能性が一つ加わりました。

光干渉断層計(OCT)と呼ばれる装置の登場です。

光干渉断層計(Optical Coherence Tomography: OCT)と言って、光を用いて組織の断層画像を得る技術です。

このOCT装置は当初、眼科領域で眼底観察の診断に応用されていた技術でした。最近ではそれが歯科でも応用されるようになってきました。

この機器は生体に対して安全な、近赤外光を使用しているので、レントゲンなどの、被ばくの心配が一切ありません。

ちなみに赤外線とは

人間の視覚は、波長の長い光を赤色光として感じとるのですが、その上限は 760 – 830 nm 付近とされ、それより波長の長い光は知覚できないので、可視光線の赤色の外側という意味で 赤外線といいます。波長ではおよそ700 nm – 1 mm (=1000 µm) に分布するものです。

さらに、波長によって、近赤外線、中赤外線、遠赤外線に分けられます。

近赤外線は波長がおよそ0.7 – 2.5 µmの電磁波で、赤色の可視光線に近い波長を持ち、性質も可視光線に近い特性を持つため「見えない光」として、赤外線カメラや赤外線通信、家電用のリモコン生体認証の一種である静脈認証などに応用されています。光ファイバーでもこの波長帯が使われ、代表的な波長は1.55µmです。

参考までに、遠赤外線とは熱線とも呼ばれ、波長がおよそ4 – 1000 µmの電磁波で性質は電波に近いものです。

 したがって近赤外線は妊婦さんや小さいお子さんにも全く問題がないのです。そのため何度でも安全に調べて検査することが可能なんです。

 どのようにして虫歯の兆候を判断しているのかを具体的にご説明しましょう。

東京医科歯科大学の田上教授の論文がわかりやすいのでこの論文をもとに解説させていただきます。

この中の研究では、う蝕による脱灰がエナメル質や象牙質に生じると, OCT 画像では輝度が上昇し,健全歯質よりも白く表示されます。

 

これは脱灰によって微小な欠陥が無数に生じ,その境界面で後方散乱光が増加するためと説明されています。

ですので、近赤外光線に照射スキャンされた歯の画像を解析すれば、本来なら白く抜けているはずのない硬い場所が白く抜けていたりすれば、そこには初期虫歯ができ始めているということが診断できるわけなんです。海外の論文いくつかご紹介しておきますので興味のある方はご覧ください。

 日本では、オクティナという名称の機器で登場する予定です。この機器は1310nmの近赤外光を変化させて干渉シグナルを形成するというものです。

 一方米国では、すでに実用化され、発売されている口腔内スキャナー装置があります。この近赤外光線を照射できるシステムを組み込んだ、米国のアラインテクノロジー社から世界で先駆けて販売されております。

iTeroElement5D Plusというスキャナ機器で近赤外光源(850nm)とセンサーを含む口腔内スキャナーです。

 そもそも口腔内光学スキャン装置自体は、これまで口腔内に光だけあてて型取りするために開発された装置です。

光学印象装置自体はすでに多くの会社から最近になってかなり多く販売されてきました。そのおかげで、多くの歯科医院でアライナー矯正や補綴物を制作する際に光学印象は多く用いられるようになってきています。その中でも、唯一iTero エレメント5DPlusだけは、革新的な診断補助装置(レーザ製品の安全基準クラス1を使用)であり、NIRI技術を搭載した初めての3D口腔内スキャナーとして製品化されたものです。

 光学印象時の光と同時に、近赤外線を照射できる機能がついたおかげで、隣接面う蝕の鑑別診断が同時にできるという点が画期的なわけです。英語となりますがレントゲンに比べた有用性が説明された論文をリンクしておきます。

 このiTero Element5D Pkusがあると、お口の中の状態を一気に把握でき、その臨床価値が虫歯予防への利用を可能にしてくれるようになりました。

 その手順は当院のYoutube動画の方でもお伝えしていますので、実際の様子はそちらでご覧いただければと思います。まず、口腔内で光学印象の時のスキャナーカメラを歯に沿って当てて映していきます。

するとその方の口腔内の状態がコンピューター上の画面に同時に映し出されていきます。このカメラから出される光の中にすでに、遠赤外線の波長体の光が入っています。

上下の歯にゆっくりとスキャナーのヘッドをあてて、なぞっているだけで、患者さんはなんの苦痛もありませんし、もちろん生体にはなんの為害性もありません。

エナメル質は、光の散乱係数が小さくなるためNIRIに対して透明です。
そのためエナメル質の厚み全体を光が通過し、画像には暗く映ります。

一方で象牙質は、象牙質細管の向きによって光の散乱効果が生じるため、画像には明るく映ります。

また、何らかの干渉がある部分/病変部/脱灰部分では散乱が大きくなるため、これらの部分は画像に明るく映ります。
iTero エレメント5Dは、革新的な診断補助装置(レーザ製品の安全基準クラス1を使用であり、NIRI技術を搭載した初めての3D口腔内スキャナーとなります。

iTeroでスキャンして得られた下顎の画像を静止画で再度説明しましょう

一見どこにも虫歯はなさそうに見えます。ところが近赤外線分析を行いますと・・

その部分を拡大しても見た目では虫歯の判断はできません

右下の6番目の歯の近心部分に近赤外線分析画像で白く浮かび上がるところが映っていました。

このコンタクト部分にCOが見つかりました

念のためレントゲンも撮りましたが残念ながらレントゲンからの判断では、まだ大きな欠損画像は映らず、そこに虫歯があるという判断はできませんでした。

要するにこの方の右下6番はCOという診断と確定したわけです

COと診断されたこの方には先ほどお話しした、口腔内改善プログラムとミネラルパックを少し続けていただき、一定期間後に再度口腔内スキャンをしてこの部分のCOが大きくなっていっていないかどうか、改善傾向が認められるか、という追跡検証をしていけば、基本的には最初から削って詰めるなどの治療はしなくて済みます。

但し、しっかりとこの口腔内改善プログラムを実行していただかないと、残念ながら虫歯は進行してしまい、COからCに悪化して、結局は歯を削られる通常の治療になってしまう場合もあるので皆さんの取り組みのご協力と自覚が必要です。

歯周病治療も虫歯予防治療も、その多くは、日々その方の口腔内への意識がどれくらい向いているかで改善の成否が左右されるのはそのためなんです。

このブログをここまでご覧下さった方はきっと口腔ケアに 興味を持っていただけている方なので、問題なく実行できると思います。

実は、面倒くさがらずに日々規則正しく口腔ケアを実行するといった単純な取り組みからすべては始まるのだということをご理解いただければ幸いです。

難しいことは何一つないんです。何でもないときにこそ、積極的に定期検診をされてみて、現状のご自分の口腔内を知っていただくことから始めていくだけです。

 

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