虫歯ができた場合、本当に小さい部分であれば、削りとって、コンポジットレジンという樹脂を詰めておしまいになります。

ところが、虫歯の大きさがある程度大きくなってきた場合、その場できれいに詰めるのには限界が出てきます。

そのために、削った歯の型を取って、別の模型を作り、そこを補う補綴物を作ったものを再度お口の中の歯にセメントで合着して噛めるようにします。

補綴物の大きさによって名前が違います

大きさによって、小さいほうから順に「インレー、アンレー、クラウン」と呼びます。

インレー装着前の歯面
図1 インレー装着前の削られた歯

 

銀歯のインレー
図2 保険の銀歯のインレー

 

クラウン装着前の削られた歯の形
図3 クラウン装着前の削られた歯の形

 

健康保険のクラウン
図4 保険の銀歯のクラウン

 

強度をどう見積もるかで変わります

補綴物は「壊れる」ことがあります。それは歯にとっても大きなダメージですし、患者様としても絶対避けたいことだと思います。なので、そうならないように私たちは補綴物をどうするか、考えます。

しかし、普段思っている以上に激しい力が歯にはかかります。やはりクラウンタイプの方が強度は高いです。ただ、その分多く削る必要があります。

クラウンタイプの補綴物(図4)は基本的に噛む面すべてを覆っているために、自分の歯とかぶせ物とのつなぎ目が、向かい合っている歯の噛みこむ場所には存在しません。したがって、強く歯ぎしりなどをした際に、そこの隙間からかけてくる危険性はすくないのです。

一方インレー(図2)の場合には上下の歯がこすれあうたびに境目にものが当たり続けるために、その部分の剥がれや欠けが起こりやすくなります。

特に、ハイブリッドタイプのインレーなどでは、その素材の強度不足と重なって、図5のようにダメになってしまう危険性が多々あります。

欠けてしまったインレーの例

設計上の問題で破損したハイブリッドインレー
図5 破損したハイブリッドインレー

赤い部分は上下の歯を嚙んでもらって実際に向かい合っている上下の歯とぶつかている場所を確認するためにつけたものです。

欠けてしまった部分は、この赤い部分が物語っているように、いつもよく使われる噛み合わせの通り道になっていたところだということがわかります。

「思ったより削られてしまった」と感じることについて

歯の場所や虫歯の大きさによって、適切な補綴物の素材と形態はその方その方に合わせて決められるものです。

ちょっとしか虫歯でないと思っていたのが、ずいぶん削られてしまった…という話は少なからず伺います。

しかし、しっかりと削り込んで、このような上下の歯の通り道になる部分が残された歯とかぶせ物の素材の位置に来るような場合には、むしろクラウンタイプのように完全に覆ってしまうほうが、欠けてきたりしないで安全ということになります。

歯ぎしりや硬いものを噛んだりした時には、何十kgという想像以上の負担がかかっていっるのです。

※もちろん、だからといって、すべての歯をいっぱい削って何でもクラウンタイプにしたほうが良いというわけではありません。

今後の生活を考えて最適な物をご提案するようにしています

今治している歯が

  • よく噛む側の歯なのか
  • えらのはっている噛む力の強い方なのか
  • 噛み合わせのパターンが緊密な方なのか
  • 前歯にしっかりとした被蓋がある噛み合わせのコントロールがされている方なのか
  • 向かいあっている噛み合わせとなる歯がインプラントなのか、あるいは取り外しのできる義歯の歯なのか
  • 削られる歯のエナメル質の結晶方向との関係

等々、言い訳のようになりますが様々なことを考えて、補綴物をご提案しています。難しいですが…。

よくあまり削らないでください…と言われることがあります。確かにその通りだと思います。

基本的に私たちも、大切な歯は最小限の侵襲で済ませるのがよく、あまり削りたくはありません。

しかし長期的な耐久性なども考慮して、それに耐えられるように虫歯を削っているという背景があります。

その前提で、ぜひご不安な点やご要望はどんどん治療時にご相談頂ければと思います。こちらも様々な方向性を用意して、できるだけ良い形にして参ります。