ただでさえ嫌な歯の治療、一度行ったらもうその場所は死ぬまで安心して使い続けたいものですね。
しかし、実際には来院する方の多くが、真面目に治療を受け続けていたにもかかわらず
- 再度同じように虫歯になってしまったり
- 以前より悪い状況になって抜歯になってしまったり
しています。
先に申し上げますと、ほとんどの方が「放置していた」ような方ではなく「何かあったら、真面目に治療を受けていた方」です。
そこでここでは、
- なぜそうなってしまうのか?
- それを避けるためにはどうしたらよいのか
について、ぜひみなさまに知って頂ければと思います。
よくあるパターン:同じ箇所の虫歯が何度も再燃して最終的に抜歯が必要に
「歯がしみて物がよく詰まる感じがしたので虫歯ができたと思い、歯医者に行く」
これは一般的な歯科医院にかかるパターンです。
そして
- 診断の結果は虫歯と歯周炎
- 歯の周りの清掃と虫歯を削って治療
- 健康保険の銀歯がはめこまれて、2回で治療終了
- 歯医者は痛みなど出てきたら、また来れば良いと遠ざかる
という流れが多いです。
数年後別の場所に問題が出ることが多い
このケースの場合、何年かしてから今度は別の場所が虫歯になることが少なくありません。そして、様々な歯が同様に虫歯になってしまい、口の中が詰め物やかぶせ物だらけになってしまいます。
ただ、みなさま「治療していれば取りあえず問題ない」と思いがちです。実はここに落とし穴があります。
直したはずの所が再度虫歯になる
ところが
「今度は数カ月してから、以前に治した銀歯がどういうわけか、そのキワの部分がやけに黒っぽくなってしまった。そして、沁みてしょうがないのに加えて、以前より歯ブラシを当てると血が出やすくなってしまった」
と、治療したはずの箇所が再度虫歯になるケースが少なくないのです。
治したはずの銀歯と歯のつなぎ目から虫歯が進んでいて、銀歯の下の方にはかなり大きな虫歯が広がってしまっているのです。この場合、再治療なので「より深く歯を削り取る」ことです。神経を取らなければならない(抜髄)こともあります。
これが繰り返されれば最終的にどこに至るかというと「ほとんど自分の歯が残っていないすり鉢状の切り株の状態となり、土台をたてられないので抜歯」です。
治療をしっかりしていたにもかかわらず、初期虫歯が結局抜歯という所まで行ってしまうのです。
なぜ、このようになってしまったのか?原因は2つ
1.症状だけに注目して、なぜ虫歯が繰り返しできるのか生活習慣を見直さなかった
まとめれば
「はじめての治療の時に、虫歯がどうして起きたのかという理由と、今後そうならないための対策法について教えてもらっただけで、今なってしまっている虫歯のところだけを治してしまえばそれでもう治療は終了してしまってその後は何もしなかった」
ことが大きな原因となっています。
虫歯は虫歯菌で起こる細菌感染症です。歯槽膿漏は歯周病菌によってひき起こされる細菌感染症です。Aさんは口の中にこの悪玉細菌に感染しています。そして抵抗力が弱まると発症するのです。
な。なので、根本的には
「細菌の量をコントロールするための、しっかりとした口腔ケア」
を治療後に継続して行わないと、いけないんですし、そう指導するのが私たちの仕事でもあります。細菌の住みかとなっているプラーク(歯垢)は歯磨きだけでは60%しかとりきれません。
虫歯や歯周病を進行させないためには、ご家庭での正しいブラッシングが必要です。
※ブラッシングについては、こちらの動画もご覧下さい
また、歯科医院で定期的なクリーニングを受けていただくことがとても効果的です。
そもそも今までの歯科診療所ではそういったアナウンスをしているところはほとんどなかったと思います。
歯科医院は悪くなったら治す場所ではありますが、悪くならないために行う予防処置を行うところでもある。なので、そのような考え方にマインドを変えていただけると、同じような事になる可能性は大きく下がると思います。
2.生活習慣に合わせた別の素材を検討しても良かったのでは
現在、奥歯の大きな歯(大臼歯)の場合、虫歯が大きくなると基本的には金属の銀歯しか、保険治療では認められていません。(小さな部分はコンポジットレジンという白いプラスチックの詰め物が使えます)
しかしこの保険治療の限界でもある「銀歯」は、汚れを引き寄せやすいのです。
銀歯は実は金属イオンの影響で、口腔内のプラークを引き寄せやいからで、特に隣り合った歯とのそのつなぎ目は慢性的に汚れやすい状態です。
そのため、歯と歯の間にある銀歯の部分は、2次う蝕と言って虫歯が再発しやすいのです。何度も虫歯を繰り返している方であれば、保険外には鳴りますが、途中から銀歯以外の、汚れを引き寄せない素材に変えるべきでした。
例えば、セラミックやジルコニアなどは、少々高くはなってしまいますがとてもおすすめです。
銀歯を使う方は
「ご自分の口腔内の状態が人よりも常に清潔に保てている自信を持つ」
くらいに日々のメンテナンスを習慣づける必要があります。
もちろん、それが可能であれば、銀歯で問題ありません(無理に保険外を押しつけたいわけではございません)
そもそも歯科医側も説明や案内をしていなかったかもしれません
また、保険治療を望む方が多い、あるいは素材に関してあまり情報を追っていない関係で、有無を言わせず奥歯は銀歯ということで、進めてしまう歯医者も残念ながらあるようです。
いろいろなご事情はあるとは思うのですが、やはりきちんと患者様に選択肢を与えることは、歯科医の義務だと思います。
当院に限らず、すでに昔の治療で入れてしまった銀歯を後日はずされて生体親和性があり、金属アレルギーの心配のないファインセラミックやジルコニアといったプラークのつきにくい白い素材に置き換えていかれる方が最近特に増えています。
歯を失わずに長生きするために、主体的に情報を得て治療に向き合ってみませんか
歯科医院で言われるがままの治療法を、相手は専門家だからと任せて受け入れることを、ぜひ止めて下さい。
歯科医と一緒になって事情や将来を考えながら、自分に合った最適な選択ができるように、ぜひ「歯科医を使い倒す」くらいの気持ちで、歯の問題には取り組んで頂ければと思います。
人の寿命が延びた結果、健康寿命をいかにして長くするか、といった議論がよくされています。
実は、口腔内を入れ歯ではなくしっかりとしたご自分の歯で老後過ごされている方のQoLは、そうでない方に比べて計り知れないものがあります。
老後になって、硬いから食べられないなどと言って食べられるものを気にしながら食べるのはとてもつらいですし、またそういった気兼ねがあると人と一緒に外へ出なくなってしまうとも言われます。
ぜひ、そのための最初の一歩として
- 歯を失わないための口腔ケアの習慣化
- 予防としての定期的なクリーニング
- 治すのなら、なるべく2次う蝕になりにくい良質な素材で治す
これを考えて頂ければと思います。
それが、再治療を避け、ずっと安心して歯を使い続けるための道です。ぜひ、ご参考になればと思います。また、お悩みの方はお気軽にご相談下さい。
西国分寺レガデンタルクリニック院長・歯科医師。歯の治療は、一般的な内科治療などと少し違いがあります。それは「同じ箇所の治療でも、やり方がたくさんある」ということ。例えば、1つの虫歯を治すだけでも「治療方法」「使う材料」「制作方法」がたくさんあります。選択を誤ると、思わぬ苦労や想像していなかった悩みを抱えてしまうことも、少なくありません。
当院では、みなさまに安心と満足の生活を得て頂くことを目標に、皆様の立場に立った治療を心がけています。お気軽にお越し下さい。