こんにちは。今日は、皆さんが歯医者さんで必ず一度は迷う「あのアレ」について、ちょっと深い話をします。

虫歯になってしまった時、診療所で最後に先生から聞かれますよね。「保険の素材にしますか?それとも、自費の素材にしますか?」と

この時、多くの人がこう思います。「とりあえず保険でいいか、安いし」「虫歯が治ればなんでも同じでしょ」と 。

でも、ちょっと待ってください。

もし、その選択が、数年後のあなたの「口臭」の原因になるとしたらどうでしょうか? 実は、選ぶ素材によって、お口の中が「細菌の住処」になってしまうか、「清潔」を保てるかが決まってしまうんです 。

今回は「お金があるから自費」とか「高いから良い」という単純な話ではありません

「あなたの生活習慣に合わせて素材を選ばないと、後で後悔しますよ」という、歯科医の本音をお話しします。

今日のテーマは「フロスをしない人の奥歯には、なぜジルコニアがお勧めなのか」です。

少し専門的な話も出ますが、皆さんの健康と「息のエチケット」に関わる重要な話ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

【第1章:虫歯治療の基本と「隠れた盲点」】

まず、虫歯治療の基礎知識です。

日本の保険制度は素晴らしいので、小さな虫歯なら、その場で削ってコンポジットレジンと呼ばれる樹脂を詰めて終わりです。これなら保険か自費かで悩みません。

問題は、虫歯が大きくて、型取りをして「かぶせ物(インレーやクラウン)」を作らなければならない時です 。

ここで選択肢が大きく分けて3つ出てきます。

    1. 金属(銀歯やゴールドやチタンなど)
    2. 樹脂(CAD/CAM冠、PEEK冠など・保険適用)
  1. セラミック・ジルコニア(自費) 

どれを選んでも、とりあえず「噛む」機能は回復します 。

しかし、私たちが気にしているのは「噛めるかどうか」だけではありません。

「その素材が、どれだけ汚れ(プラーク)を寄せ付けやすいか」 という点なんです。

 

【第2章:恐怖の「歯と歯の間」】

所は大きく分けて3種類ほどあります。

 

特に注意してほしいのが、「歯と歯の間(隣接面)」の虫歯です

ここは、お口の中で最も汚れ(プラーク)が溜まりやすい場所No.1なんです 。

見てください。これはしっかりと歯磨きをしている方の写真ですが、歯と歯の間や歯茎の境目に汚れが残っていますよね 。

実は、歯ブラシだけではどんなに上手に磨けている人でもお口の汚れの60%しか落とせません。

これは以前フロスの動画でもお話ししましたが、フロスを使わないと、この隙間の汚れは永遠に残ったままなんです。

 

【第3章:なぜ「保険の白い歯」が臭うのか?】

さて、ここからが今日の本題です。

最近、保険適用で「白い歯(CAD/CAM樹脂)」が入れられるようになり、人気です 。銀歯より見た目がいいですからね。

でも、この樹脂には弱点があります。

それは「多孔質(たこうしつ)」といって、顕微鏡レベルで見るとスポンジのように小さな穴が無数に空いていることです 。

新品の時はいいんです。でも、数年経つとどうなるか。

この小さな穴に、お口の中の細菌やタンパク質が入り込みます。そして素材自体が劣化して表面がザラザラになります

ザラザラになると、さらに汚れがつきやすくなる。

実際に、数年使ったこの樹脂を外す時、独特の「腐敗臭」がすることがあります。また外れてしまったCAD/CAM冠を再セットする際に内面に残ったセメントを除去して削るときに腐敗臭が必ずします。

これは樹脂の臭いではありません。素材の中に染み込んだタンパク質が腐った、いわゆる歯周病菌(PG菌)が出す悪臭なんです。

つまり、フロスをあまりしない人が、この「汚れを吸着しやすい樹脂」を、一番汚れが溜まる「歯と歯の間」に入れてしまうとどうなるか?

そこは「口臭発生装置」になってしまう危険性があるんです 。

また金属の場合ではどうかと言うと、樹脂ほど劣化はしないものの、プラークが付いたままになっているとその部分から酸化して2次う蝕が発生してしまうという事なんです。

銀歯がしみるとのことで来院された方の写真ですが一見何でもないように見えますが・・・

外してみると歯頚部のマージンに沿って黒く酸化腐食して2次カリエスになっているのが観察されます。

【第4章:救世主「ジルコニア」の正体】

そこで比較したいのが、自費治療の「ジルコニア」です。これは、お皿(セラミック)に近い素材ですが、最大の特徴は「圧倒的にツルツルで、汚れがつかない」こと。

この写真を見てください。健診で来られた方のスキャンしたものですが、手前の自分の歯には汚れがついていますが、ジルコニアの部分だけピカピカですよね 。

ジルコニアは、プラスチックや金属、そして従来のセラミックと比べても、最もプラーク(汚れ)がつきにくい素材なんです。セラミックよりもジルコニアの方のほうがプラークがつきにくいと言われています。

つまり、「掃除がしにくい場所」にこそ、「汚れがつかない素材」を持ってくる。これが、お口の健康と口臭予防を守るための、プロの戦略なんです。

 

【第5章:あなたはどっち?運命の「フロスの臭い」チェック】

では、結局あなたはどちらを選べばいいのでしょうか?

明確な「線引き」をお教えします 。今すぐできるチェック方法があります。

奥歯の歯と歯の間にデンタルフロスを通してみてください。そして、そのフロスの臭いを嗅いでみてください 。

  • A. 臭わない、もしくは毎日必ずフロスをしている
  • B. 正直臭う、またはフロスはたまにしかしない

もし「B」の方、つまりフロスが臭う方は、すでにその場所に歯周病菌(PG菌)が住み着いています 。

そんな環境に、汚れを吸いやすい「保険の樹脂」や「銀歯」を入れると、火に油を注ぐようなものです。

「毎日完璧にフロスをする自信がない」

「すでにフロスが少し臭う」

そういう方こそ、自分の磨き残しをカバーしてくれるジルコニアを選ぶべきなんです 。

 

【まとめ】

如何だったでしょうか。

かぶせ物を選ぶ時、費用ももちろん大切です。でも、「あなたの生活習慣」も判断材料に入れてください。

  • 毎日フロスができない人 30
  • 奥歯のフロスが臭う人 31

こういった方は、将来的な口臭や二次カリエス(虫歯の再発)を防ぐために、汚れを寄せ付けないジルコニアを強くお勧めします 。

逆に、すでに保険の白い歯を入れている方は、そこが「弱点」であることを自覚して、その部分だけでも毎日必死にフロスをしてください。そうすれば長持ちさせられます。

治療の素材選びは、ただの買い物ではありません。

かぶせ物は立派な人工臓器の一つで、これからのあなたの生活を共にするパートナー選びです。

ぜひ、今日の話を思い出して、後悔のない選択をしてくださいね 。

最後までご清聴頂きありがとうございました。

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